2008年 11月 04日
Shasta-6:モスブレー滝
昔は海外旅行というと、次にいつこの国を訪れることが出来るかわからない
から、あちこち廻っておこうとびっちりスケジュールを立てて、それに従って
一日フルに動いたものだった。
もともと段取り・根回し・下調べバッチリ派の性格。せっかくだから、もった
いないしと…。それが、ここ数年は一都市をゆっくり、その日の気分で行動し
ようと旅の楽しみ方も変わってきた。
8日間、シャスタでゆっくり過ごそうと決めたので、朝早くから、あそこへ行
こう!ここも行こう!と時間に追われることもない。午前中、のんびりとロッ
ジで過ごしてから、Y氏とランチを食べる約束。
マウントシャスタシティ一番の人気店「Black Bear Diner(ブラックベアーダイ
ナー)」へ。

サラダ付きサンドイッチを頼んだが、かなりのボリューム。サンドイッチ半分は
持ち帰り用のBOXをもらう。おやつにしよう。
午後に仕事のあるY氏と別れて、今日は「Mossbrae Falls(モスブレー滝)」
に行く。ここは、岩肌の苔の上を這うように流れる水の線が、まるで日本の
「白糸の滝」の如く、とても美しい滝だそうである。
Y氏に地図を書いてもらって向かったのだが、どうも目印のゲートが見つから
ない。どこをどう間違えたやら…丁度踏切で、列車が通り過ぎるのを待ってい
た車を見つけ、車を降りて教えてもらうことにする。
「あぁ、ハイウェイの出口がひとつ先なんだよ。もう一度5号線に戻って、
そこから…えぇっと、書くものある?ここを通って、こっちへ行って、ここ…」
と親切にオジサマが教えてくれた。
「どうもありがとう!」と再び、車に乗り込んでハイウェイへと戻ろうとする
と、入口で先程道を教えてくれたオジサマが車から降りて、腕組みして待って
いた。
窓を開けて「こっちでいいんですよね?」と声を掛けると、「僕が案内してあ
げるから、ついておいで!」と手招きする。うわぉ。
オジサマはハイウェイを通らずに下道をずんずん進む。途中、オジサマ自身も
不安になってか、路面にあった店に入って店主に道を確認しながら…。
そして、踏切わきの空き地に車を停めて、こう言った。

「ここに車を駐車して。これから20分くらいかな、線路を歩いていくんだよ。
途中列車が通るかもしれないから、音が聞こえたら右側によけて。しばらくす
ると鉄橋が見えるから、そうしたら、その手前を右に降りて。すぐに滝が見え
よ!じゃぁ、気をつけてね。」
なんて親切なんだろう!
仕事の途中だったろうに、約20分くらいの道のり、わざわざ目的地まで先導
してくれた。
「ありがとう!本当にありがとう!シャスタの人はみんな親切で、こんな素晴
らしいところはないわ!」と感激して言うと、「当然だよ。こんな美しいご婦
人が迷っているのに、放っておけるわけないじゃないか。」と言ってくれたよ
うな気が…未熟な英語力ではそう聞こえた。(笑)
さて、線路を歩く? 線路の脇の道を歩く、じゃなくて?
ホントだ。脇道も柵もない。線路の砂利を歩くと足を痛めそうなので、枕木を
歩いていく。

まるで映画「スタンド・バイ・ミー」だ。実際、この鉄道のオレゴン州よりの
線路や、近くのマクラウドという小さな街がロケ地に使われたらしい。
スリル満点!こんな所を一人で歩いているなんて、すっごく楽しい!
途中、誰にもすれ違わない。たった一人。

ようやく鉄橋が見えてきた。
手前を右に降りる…と言っても、なんの案内看板も、矢印もない。
「Mossbrae Falls」なんて、どこにも書いてない。足跡のあるところをたどっ
て、降りていくと沢に出た。


おぉ、滝だ!
この時期は水量が減っていて、夏場ほど勢いのある白糸をみることはできない。
それでも充分に美しい水の流れ。

釣り人が場所を移動すると、また私一人。流れる水の音だけ…。

清浄な空気、眩しい光、見飽きることのない美しい水の流れ、そして音。


「ついておいで」と小鳥に誘われる。


ぴょん。

どこへ行くの?

滝の裏側へ。 そっちまで、行けないわ!

しばらくまどろむ。あぁ、なんて気持ちいいのだろう。
さてと、そろそろ、線路を戻るか…。

イモリがずっとついてきてくれる。
列車通過のドキドキはなかったが、冒険の先に観た美しい滝に、心躍る午後
だった。