2008年 11月 11日
Shasta-10:プルート・ケイブ
「明日はネイティブアメリカンの儀式に参加するから、聖地を巡るのも今日
だけだね。“ Pluto Caves(プルート・ケイブ)”に行こう。」
この洞窟、一人で行くのは危険な場所と言われているが、どうしても訪れたい
という想いがあったので、Y氏の提案がとても嬉しかった。
「ちょっと用事があるので、YREKA(ワイリカ)の街まで足を伸ばすよ。」

マウントシャスタシティからハイウェイを北上すると、20分もしないうちに
砂漠地帯のような景色が広がる。
シャスタ山は、ツインピークスのシャスタとシャスティーナの位置が逆になる。
これまでとはまるで趣が異なる景観だ。

ワイリカは、ゴールドラッシュの時代に栄えた街。
金を求めて集まってきた人々が寝泊まりし、酒場(2階が娼館)が軒を連ねた
当時の面影が残る街である。
「ねぇ、マウントシャスタシティもそうなんだけど、ネイティブアメリカンの
聖地があちこちにあるわりには、ネイティブの人の姿や工芸品とかお土産物も
少ない気がするんだけど、どうして?」と、Y氏に質問する。
「それはね…ゴールドだよ。カリフォルニアに金鉱が発見されてからは、白人
たちが先住民族を全て追い払ったんだ。虐殺したり…家を焼いたりして、この地
にいられなくした。この地で生き残れなくしたからだよ…。」
土地を明け渡して強制的に指定居住区へ移動させるか、戦争か。
何百年にもわたる差別の歴史のなかで、土地を奪われ、何百万という人々を
虐殺された先住民族たち。
美しいシャスタの山にも、清らかな水の流れにも、その悲劇の記憶がある。
プルート・ケイブに向かおう。
ハイウェイを降りて、WEED(ウィード)の街を通り抜け、民家も店もない道路
を進むと、うっかり見落としてしまうような細い柱に「 Pluto Caves 」の文字。

このあたりには、ネイティブアメリカンの人たちが浄化に使うことで知られて
いるホワイトセイジが群生している。

ゲートから10分くらい歩くと、岩場にケイブの入口が見える。
この洞窟は、侵入許可されている所は数キロまでだが、数百キロ先のオレゴン州
まで続いているという。

暗闇の中、かなり足場の悪い岩を超えていくため、懐中電灯がなければ歩けない。
時折、「 Skylight(スカイライト)」と呼ばれる光が差し込む場所がある。
この洞窟は、ネイティブアメリカンの生活の場所、出産の場所とされていたら
しい。しかしながら、私には「誕生」よりも「死」の気配の方が強く感じられた。

何もない洞窟内に漂う濃密な気配、息が詰まるような感覚。
私は、祈った。
「神を尊び、家族と仲間を愛し、優れた叡智と勇気をもった人々の魂を讃えます。
深い悲しみを超えて、この地におわす御霊よ、どうぞ愚かなものを赦し、か弱き
私達をお守りください。あなた方から伝えられた学びに、感謝します。」
そして、洞窟内に自分の声を響かせた。

これまで遭遇したことのない程の、たくさんの精霊が集まってきた。
この場所で、お祈りすることができて本当によかった。
「ありがとうございます」と何度も呟いた。
暗い洞窟を出ると、光が眩しい。

何故か、何もない空中に向かってシャッターをきっていた。
力強く、そして優しく包み込むような美しい光。
洞窟に入る前とは全く違う、深い静けさに心が包まれるような感覚を憶えた。

「 早めに夕食をとろう! 今日は中華にしようか。」

Y氏に連れられて行ったのは、「 CHEN & LEE'S(チェン&リーズ)」と
いうレストラン。うん、美味しい!

例によって、たくさん残った料理をお土産に。会計の時に、おみくじクッキー
をもらう。私のクッキーの中に入っていた紙には、
「 Financial prosperity is coming your way.」と書いてあった。
金運上昇まちがいなし!(笑)
ウィードの街にある「 PAPA'S PLACE(パパズプレイス)」というパブへ行く。

Y氏の友人のブルースバンドがハウスバンドとして出演する店だ。
「ラムをロックで!」、1ショット4ドル。
ハウスバンドの演奏のあとは、楽器持参のお客さんが一人二人と加わって
メンバーチェンジしてジャムセッション。

一番右のギターのオジサマは、ハウスバンドのボーカルで、私の泊まっている
マウントシャスタリゾートを建てた大工さん。
飛び入り参加の女性ヴォーカルは、シスキュー大学のスタジオでTV番組を
収録した時にVTR撮影の手伝いをしていたアンナ。彼女はとってもパンチ
の効いた素敵な声だ。英語の下手な私にとてもわかりやすく、楽しくお喋り
してくれた、シャスタで一番最初の女友達。後ろのドラマーは、アンナの
ダーリン。二人はいつもどこへ行くのも一緒。
ベーシストは飛び入りの米軍兵士さん。「佐世保にいたことがあるよ。」と
言っていた。
「 同じの、くださーい。」4杯目…いい気持ち。みんな友達。
シャスタに来て、初めての夜遊び。時計は23時。
「エミ、またシャスタに来てね!」みんなとハグして、おやすみなさい、
そして、さようなら。 …また、会いましょう。