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響和堂Blog 『 湧玉 wakutama 』

Shasta-12:ペヨテセレモニー

深夜0時。 儀式が始まる。
一列に並び、一人ずつ、厳かな気持ちで、ティピ(テント)の中に入っていく。
ティピの中では、必ず入口から時計廻りに移動する。
儀式の間はもちろん撮影していないので、イメージが伝わりにくいかもしれないが、
ティピの中央に火が焚かれ、みんなが車座になって座る。入口の反対側にメディ
スンマン(宗教的指導者、シャーマン)のフロイド氏とその家族が座る。
儀式は、それぞれの手で巻きタバコを作ることから始まった。
トウモロコシの皮を乾燥させた、6cm×8cm位の紙を唾液で湿らせて柔らかくし、
その上にタバコの葉をおいて巻き、スティックを作る。順にまわってくる焼けた
丸太棒で火を付ける。そして吸う。
しばらくして吸い殻は回収され、焚き火の廻りに丁寧に並べられる。タバコの
煙は、精霊との通信媒体となると聞いたことがある。
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( ※この写真は、儀式終了後に許可を得て撮らせてもらったもの。)
そして、メディスンマンが話始める。
一族の話、いかに苦しく厳しい迫害の歴史があったか…。
涙を流し、そして歌う。
運命を呪わず、決して神を疑わない。いかなるときも、神に近付こうと浄化
を続け、祈り続ける。
ウォータードラムとラトル(ガラガラ)とイーグルの羽、セイジの枝を、
時計回りに一人ずつ受け取り、廻していく。
メディスンマンに指名された人が、祈りの言葉と歌を歌う。
自己紹介や、心の奥のいろいろな想いを語り、嗚咽やすすり泣きもあちこちから
聞こえる。歌は、もちろん、古くから伝わるネイティブアメリカンの言葉に
よる歌詞だが、母音を追って、私も一緒に歌う。 力強く! 神に届けと!

これが朝まで続くのだが、その語りと歌の合間に、ペヨテを乾燥させて粉にした
ものと、煮出してお茶にしたものが廻ってくる。これを食べて、飲む。
苦い。とてつもなく苦く、じゃりじゃりと灰を口に含んだようで、マズイ。
しばらくすると、嘔吐を繰り返す人も出てくる。地面に吐き出されたものは、
すぐに場所を清浄に保つために掃除され、新しい土がもられる。
ペヨテのメディスンは、人によってとても強い作用を起こすもので、幻覚に
よって、いろいろなビジョンを見せられる場合もあるという。
あまりにひどい嘔吐のため、リタイアする人も出る。みんなが「 Thank you ! 」
と声を掛けて、その人がティピから出るのを見送る。
儀式の間、3度ペヨテが廻ってきたが、私は全く、なんの変化もなかった。

メディスンマンの奥さんが、女性(母)としての役割で水を汲んできて、みな
に与える。
息子さんがウォータードラムを叩いて、祈りの歌の演奏する。
同じシャイアン族の友人は、入口近くに座り、絶え間なく火を焚き続ける。
そして、地面を清浄に保つ係など、それぞれが役割をもって、儀式は進行する。
ゆっくりと、静かに、時に激しく、時に深い悲しみに満ち、そして愛と感謝の
祈りで精霊がティピの中に訪れるのを感じ…。

「日本から来た友よ。私たちのために、何か祈りの言葉か歌を歌ってくれな
 いか?」 ネイティブアメリカンの古い歌が歌える男性しか指名されていな
かったのに、いきなり、メディスンマンの声が私に掛かった。
英語では、うまくお祈りの言葉は話せない。
「私は、英語が得意ではないので、歌を歌います。ビルさんも知っていた
 日本の古くから伝わる歌“ さくら さくら ”です。

    さくら さくら  弥生の空は 見渡す限り
      霞か 雲か 匂いぞ出ずる
         いざや いざや 見に行かん      Thank you... 」

心を込めて歌った。
歌詞の中に、“ 弥生の空は ”とあるが、実は私の母の名前は“弥生”である。
みんなが先祖や家族の話をし、涙し、歌っているのを聞いて、私はこの場所で、
母の名前の入った歌詞を歌い上げたかった。 これ以上の選曲はないと…。
歌いながら、喜びに心がふるえた。
そして、みんなが喜んでくださった。 嬉しい。本当に嬉しかった。

儀式の終わりは、ティピの中でとる朝食。
とうもろこし、野いちご、豆、チキンをそれぞれ煮た鍋を順に廻して、手のひら
にのせて食べる。昔ながらのネイティブアメリカンの食事。
朝7時。
時計回りに一人ずつ、ティピから外へ出る。
「 Good Morning !! 」みんな声を掛け合い、ハグし合う。
そして、みんなが、口々に素晴らしい歌だったと褒めて下さる。
あぁ、この至福の時を、深く感謝する。
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by kyowado | 2008-11-11 23:11 | シャスタ旅行記