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響和堂Blog 『 湧玉 wakutama 』

熊手から寒天まで

11月29日(土)
大酉祭は、例年11月の酉の日に行われる、各地の鷲神社(おおとりじんじゃ)の
祭礼。日本武尊(やまとたけるのみこと)を祀り、武運長久、開運、商売繁盛の
神として信仰されるこの神社において、酉の市が立ち「熊手」や「切り山椒」を
はじめとする縁起物を買う風習は、関東地方特有の年中行事である。
私の勤務先の近くには目黒・大鳥神社があり、毎年ここの酉の市で神社が授与す
る「熊手守り」を購入して、会社と支店、自宅に飾っている。
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浅草・鷲神社の社伝によると、日本武尊が鷲神社に戦勝のお礼参りをしたのが
11月の酉の日であり、その際、社前の松に武具の熊手を立て掛けたことから、
大酉祭を行い、熊手を縁起物とするとしているそうだ。
熊手は、鷲が獲物をわしづかみすることになぞらえ、その爪を模したともいわれ、
福徳をかき集める、鷲づかむという意味が込められている。
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東京では、浅草・鷲神社をはじめ、新宿・花園神社などが、場所柄大変な賑わい
を見せているが、私は、このこじんまりとした地元のお酉さまに欠かさず行く
ことにしている。会社や商店の経営者が、「値引きとご祝儀」の商談を交わし
た後、威勢のいい手締めを打たれながら、熊手を買っていく一連の流れは、
見ているだけで景気がよくなる感じがして、気持ちいい。粋な江戸情緒である。

目黒・大鳥神社は、日本武尊だけでなく、国之常立神(くにのとこたちのかみ)
も祀られていると、この日初めて気がついた。確か、根源神とされている神さま
だ。先に奉納演奏をした水天宮に祀られている天之御中主大神(あめのみなかぬし
のおおかみ)とも大いに関連がある。
この後、水天宮に「響和堂」の名でお酒を奉納しようと用意していたので、
この繋がりに、なんとなくわくわくしてきた。
熊本・幣立神宮、飯田橋・東京大神宮、日本橋・水天宮、そして目黒・大鳥神社
の自分が特に大事に思ってお参りしてきた神社には、いつも宇宙根源の神さまが
いらっしゃる。

さぁ、水天宮に行こう。
と車を走らせていると、丁度、高輪あたりを通りかかった時に、もうひとつ
大事な立ち寄る所があったと思い立った。
高野山東京別院だ。空海さまに会いにいこう。
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神道の神さまの名前が出てきたかと思ったら、今度は、仏教かとアヤシク思わ
れるかもしれないが、私は特定の宗教の信仰はないので、神道も仏教も関係ない。
ただただ「みんなが幸せになりますように」と世界平和を祈るだけだ。
だから、特に神さまの「気」を感じる所なら、キリスト教だろうがなんだろうが、
思わず手を合わせたくなる。真に守り導いてくださる神さまなら、どんな宗教で
あろうと、世界中の神さま総動員でご加護を戴きたいし、宇宙創造神は唯一の、
同じ存在であるはずだ。
さて、この高野山東京別院は、都営地下鉄高輪台駅から徒歩5分、JR山手線品川駅
から徒歩10分の立地にあるが、いつ行っても本当に静かなのである。
勤務地の五反田からこれまた至近にあり、時折、仕事の車移動の合間に立ち寄る
と本堂には誰もいないことが多い。とても気持ちがよく、心を落ち着かせるのに
最適な、私の大好きな場所だ。
この日は土曜日にもかかわらず、参拝する人の姿はなく、私ひとり。
護摩木に「世界平和」と書いて、ろうそくに火を灯し、靴を脱いで、本堂にあが
る。中央の空海さまの像の近くに座って香を焚き、手を合わせる。誰も来ないの
で、ゆっくりとお話しする。
空海さまの左には、不動明王と聖観世音菩薩、右には愛染明王と地蔵菩薩が
祀られている。それぞれにお参りをして、すっきりとした気持ちで、また車に
乗り込んだ。日本橋へ向かう。
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水天宮は、お礼参りの家族連れや、妊婦さん、若い夫婦で賑わっていた。
この赤ちゃんをとりまく幸せオーラの賑わいも、高野山別院の静けさと対照的
ではあるが、とても気持ちいい。
お酒を奉納して、お下がりのお供え物とお守りを戴く。
なんだか、お参りスイッチが入ったみたいに、都内で度々訪れる大事な場所を
廻ったが、実に清々しく、よい一日になった。

さて、いつもは水天宮の駐車場に車をいれるのだが、かなり混雑していたので、
この日は道路沿いのパーキングメーターに駐めた。お参りを終えて、水天宮の
裏手を歩いていると、オレンジ色の幟が目に入った。
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「お、くず餅!こんなお店、あったんだー。」
看板も何もなく、扉ガラスに「寒天 近松」と書かれているだけで、店舗と
いうより、製造卸の風情。思い切って、入ってみることにする。
「ごめんくださーい。小売りしていらっしゃいますか?」
「はーい。くず餅と寒天、どちらになさいますか?」奥からおばさまが
出てきて、優しく応えてくれた。
くず餅だけでなく、寒天がブロックで水槽に浮かんでおり、サイの目に切った
ものと、ところてんについてくれるものとある。寒天のブロックは豆腐3〜4
丁分位の大きさだろうか。
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両方買うと食べきれない気がしたので、くず餅はまた今度にして、寒天を半分
サイの目、半分ところてんについてもらう。どちらも専用の木枠にいれて、
押し出すと、うまいこと切れるもんだ。おばさまがビニール袋にいれてくれて
いるのがところてん、水色の容器に入っているのがサイの目のもの。
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天草を煮る釜は銅製。10円玉と同じ色に光っている。
「何年くらい前からやっていらっしゃるんですか?水天宮が好きで、よく
来るのですが、こちら側は通らなくて気がつきませんでした。」
「もう100年以上になります。昔は、この釜三つを使っていましたが、今では
 作る量も減って、一つしか使っていないんですよ。」
「こういうお店は、私達がちゃんと伝えて、残していかないといけないなぁと
 思います。お友達にもご紹介しますね!」
「今度、水天宮にいらっしゃる時には、是非、お電話くださいね。お取り置き
 しておきますし、その時間必ず私がいるようにしますので…」と言いながら、
名刺をくださる店主の戸田道子さん。本当に気持ちよく応対してくださった。
黒蜜も合わせて購入し、家に帰って早速食す。寒天に時折ある“海藻臭さ”が
まったくなくて、上品な喉ごし。水天宮を訪れる楽しみが、またひとつ増えた。
次回は、くず餅も。

近 松 / 中央区日本橋蛎殻町2-6-1 Tel. 03-3666-5488
http://www.ic9tokyo.com/nihombashi_zkn_index.html
by kyowado | 2008-12-01 20:09 | あれこれ…想う