2009年 10月 15日
ミツバチの羽音と地球の回転
鎌仲ひとみさんが、原発に反対する祝島を舞台としたドキュメンタリー映画
『 ミツバチの羽音と地球の回転(仮題)』 を制作中です。
その公式サイトから、「 INTRODUCTION 始めに 」の監督からのメッセージを
転載いたします。
… 持続可能を求める旅
私たちが切り開く未来のイメージ …
前作、「六ヶ所村ラプソディー」では原子力産業の最前線で生きる六ヶ所村の人々
を取材しました。
どのようなエネルギーを選択するのか、今、私たちは問われています。
地球温暖化という国境を越えた環境破壊が進む時代に生きる私たちは、私たち自身
の生活が環境破壊につながるというジレンマに直面しています。
このジレンマを解く道はないのか、とこれから作る作品で改めて問いかけたいの
です。
構造的な環境破壊を根本から見直し、新しいエネルギーの作り方、使い方を探りな
がら社会のシステムそのものをシフトしていかなければ未来がないことを多くの人
が理解し始めています。
ではどのようなエネルギーに、社会に、どうやってシフトしていけばいいのでしょ
うか?
私はそのヒントがスウェーデンにあるのではないか、と注目してみました。
スウェーデンは脱原発を国民投票で決め、2020年までに石油にも依存しない社
会づくりをめざしています。
実はエネルギーをシフトする背景には民主主義や情報の透明性、そして人権意識の
高さがあることが見えてきました。スウェーデンはCO2を削減しながらゆるやか
ながらも経済成長を続け、質の高い福祉を実現しています。
日本とスウェーデンの違いはいったいどこにあるのでしょうか?
目下、山口県上関町で新たな原子力発電所の建設計画が進められています。
この原発は瀬戸内海の入り口にある美しい湾を埋め立てて建設されます。この原発
予定地の真向かいに位置する祝島の人々は建設に26年間、反対してきました。
しかし、島民の思いとはうらはらに計画は進んでいます。埋め立て予定地、田ノ浦
は海底から淡水が湧く多様な生物の楽園です。祝島の漁師にとっても最高の漁場です。
祝島の人々の暮らしが持続可能でなければ、私たち自身もまた、持続可能ではあり
ません。
「持続可能」という言葉は実に多様な意味を含んでいます。
その中でも私が最も大切だと考えるのは自然の法則に逆らわないということです。
今回の作品で表現し、伝えたいと思っているのは普段私たちが見過ごしている自然
循環の大きな力です。それを敵にするのではなく、共に生きるという感覚です。
実は、私たちの先人たちがそうやって生きて、1000年も2000年も文化や地
域を持続させてきたのです。その生き方を再発見し、現代のテクノロジーと共に生
かしてゆくという課題があります。それが、私たちの持続可能で安心できる未来の
イメージとなるのではないか、という予感がしています。
一方で絶望的とも思える現実を直視しながら、もう一方で今、存在する可能性と
希望を、それがたとえどんなに小さくともあきらめない、そんな眼差しを持って
この映画を制作したいと望んでいます。
この映画は旅するカメラの記録です。
まったくかけ離れた場所で生きる人間の営みを一本の映画にすることで私たちが
これからどうしたらいいのか、見えてくるのではないかと期待しています。社会を
シフトする人間のエネルギーやネットワークが生れるためのメディアになりたいと
思っています。
鎌仲 ひとみ
■ ミツバチの羽音と地球の回転 http://888earth.net/index.htmls
by Emi Nakamura