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響和堂Blog 『 湧玉 wakutama 』

ミュージカル「 Miss Saigon 」を観に行く

ミュージカル「 Miss Saigon 」のチケットを戴いた。
引っ越しと出張で慌ただしい毎日がようやく落ち着いて、演劇が大好きな私に
ご褒美を戴いたように思う。
響和堂の右腕スタッフ、浩子ちゃんを誘って、青山劇場前で待ち合わせ。

出掛ける前に、切るに切れない大事な電話が立て続けに入った。
・・・ヤバイ。
開演時間に間に合わないかもしれない。
表参道までは最寄り駅から乗り換え無しで3駅、6分。でも家から駅まで歩いて12分
かかるし、表参道駅から劇場までも5分くらいかかるので、これはタクシーに乗った
ほうが早いかもしれない。
そう判断して、車の通りの多い道路に出て、手を挙げてタクシーを拾った。

あ、個人タクシーだ。
私は、あまり個人タクシーが好きではない。総じて感じの悪い運転手さんが多いと
いう変な思い込みがあって、個人タクシーに向かって手を挙げることはまずない。
が、劇場前で待っている浩子ちゃんはチケットを持っていないので、遅れるわけ
にはいかない。「ま、いっか」と乗り込んだ。
「青山劇場まで。すみません。時間がなくて急いでいるのでよろしくお願い
します。」

直ぐに国道246に入ったが、
「お客さん、高速で横転事故があった影響で、246もとても渋滞してますねぇ。」
と運転手さん。
「15分では劇場につきませんか?」
「渋谷まで15分以上かかるかもしれませんね。」
「じゃ、池尻大橋の駅前で降りて、電車に乗った方がいいでしょうか?」
「そうですね。時間がないなら電車の方が確実だと思います。」
池尻大橋の駅まで、すぐのところに来ていたので、タクシーを降りることにした。
ワンメーター720円。

支払おうとしてバッグに手を入れると、無い。
お財布が無い。
しまった!慌てて外出して、お財布を入れるのを忘れてしまった。
ここで降りても、電車に乗るお金がない。
かといって、家までタクシーで戻ってもらってから劇場に向かうとなると、完全に
遅刻だ。
これは、ここでタクシーを降りずにこのままタクシーで劇場まで行って、浩子ちゃん
に支払ってもらうのが一番いいだろう。
「すみません!お財布忘れちゃったので、このまま劇場に行ってください。待ち合わ
 せしてる友達にお金払ってもらうので。」
「いや、開演時間に間に合わないと困るでしょう。電車の方がいいですよ。タクシー
 代はいりませんから、電車で行ってください。」
「いえ、でもお財布ないから電車にも乗れないので、このまま行っちゃってください!」
「これも何かのご縁ですから、この500円を持って行ってください。500円あれば
 なんとかなるでしょう。」
「え?!そんな・・タクシー代払わない上に、電車代までもらって、申し訳なさ過ぎ
 ます・・・」
「いいんですよ。いつもこのへん走ってますから、またお会いすることがあるかもしれ
 ませんし。」
「では、名刺か連絡先をいただけますか?」
「いえ、名刺営業していないので持っていないから、ホントにいいですから、遅れない
 ように早く行ってください。」
「じゃ、私の名刺を渡しますので、ここにメールも書いてありますから、振込先を
 教えてもらえませんか?絶対に連絡くださいね!絶対ですよ!」

こうして私は、500円硬貨を受け取って、タクシーを降り、池尻大橋駅の階段を駆け
下りた。表参道駅まで2駅、タイミング良く電車が来る時間。切符を買って、ホーム
に向かう階段をまた駆け下りた時、あ、アブナイっ。
履き慣れているハイヒールなのに、グラッときた。ヤバイ、転ぶっ!
膝をついて2段くらいズルっと滑ったところで止まったので、足首の皮がズルッと
むけたくらいですんだ。何もなかったように立ち上がり、ホームに入ってきた電車に
乗り込んだ。
あぁ、痛いなぁ。きっと青あざになるんだろうなぁ。でも骨に異常がなくてよかった。

表参道駅に着いて、改札出ようとしたとき、あれ? あれ? 切符がない。
もしかすると、さっき池尻大橋駅で転んだときに落とした?
見つからないので改札で係員さんに切符がないことを告げた。
「どこから、いくらの切符を買いましたか?」
「池尻大橋から、260円です。」
「わかりました。今回は結構ですので、無くさないように気をつけてください。」

こうしてまたひとつドジを重ねて、劇場へと急いだ。
入口に立つ、あったかい笑顔の浩子ちゃんが見えた。
劇場に到着するまでに冷や汗やら、あぶら汗やらしっかりかいて着席した。

さて、随分長い前置き。
「 Miss Saigon 」は まだ観たことがなかった。
主人公のキム役は知念里奈さん、相手役のクリスは山崎育三郎さん、そして物語の
重要な役柄であるエンジニア役は市村正親さん。
さすが市村さん、このミュージカルは「 Mr.Saigon 」か?というほど圧倒的な存在
感だった。作品自体に大きな力があるので、感動は約束されていといってもいいか
もしれないが、あまりに市村さんの求心力が強いので、他のメインキャストがかす
んで見える感もあり。
入口で配布されたチラシには、今後「屋根の上のヴァイオリン弾き」や「家康と
按針」などの出演予定もあって、63歳の今年に4本のミュージカルの舞台に立たれ
る姿に敬服する。
会場はほぼ満席、スタンディングオベーションで終演。あぁ、本当にライブステージ
は楽しい。

夕食は休憩時間に食べるよう美味しいお弁当を買っておいてもらっていたので、終演
後にスタバでお茶してしばし浩子ちゃんとお喋り、帰りの電車賃も借りた。
かくして、長い熱い夏の夜は終わり。あまりドジをふまないタイプだと自負していた
のに、そんな私は遠い昔の姿になってしまったか、度重なるドジ。現実を受け止め
なくては・・・。(笑)

翌日、親切にしていただいたタクシーの720円の領収書をもらっていたので、記載さ
れていた個人タクシー協同組合の電話番号に連絡して(井上さんという名前と車番号
しか書かれていなかったので)、受付の女性に事情を説明。事務所に送金して、井上
さんに渡してもらうことにした。
タクシーにタダ乗りした私に、「これも何かのご縁ですから」とお金まで渡してくれ
た井上さん。本当にありがとうございました。

仲村映美
by kyowado | 2012-08-26 09:40 | あれこれ…想う